Letter

セントロメアヒストンCENH3のゲノム編集によるコムギでの父方半数体の作製

Nature Biotechnology 38, 12 doi: 10.1038/s41587-020-0728-4

新たな育種技術は生殖質の改善を促進し、種子生産での商品原価を低減させる。そうした技術には、重複受精後に母方(卵細胞)のゲノムが消失して起きるin vivoでの父方の半数体誘導(haploid induction;HI)を用いるものが多い。シロイヌナズナ(Arabidopsis)では、重要なセントロメアヒストン(CENH3)遺伝子を操作することによって父方HIが引き起こされている。CENH3はさまざまな作物で機能が保存されているが、CENH3に基づくHIはシロイヌナズナのモデル系以外では成功していない。本論文では、HI率が約7%で商業的に使用可能なコムギの父方HI系統について報告する。この系統は、ゲノム編集を受けたTaCENH3αのヘテロ対立遺伝子の組み合わせをスクリーニングすることによって見いだされた。シロイヌナズナとは異なり、編集を受けた対立遺伝子は雌性配偶体で伝達が抑制されており、ヘテロ接合の遺伝子型はホモ接合の組み合わせに比べてHI率が高くなった。こうした進展はさまざまな作物でのCENH3 HI技術の展開に道を開く可能性がある。

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