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ヒトの免疫細胞の分化および腫瘍内T細胞の疲弊に関する超並列単一細胞クロマチン全体像

Nature Biotechnology 37, 8 doi: 10.1038/s41587-019-0206-z

複雑な組織を理解するためには、遺伝子調節を単一細胞レベルで精密かつ大規模に解析する必要がある。今回我々は、単一細胞中でトランスポザーゼが接近可能なクロマチンを液滴に基づいて塩基配列解読法でマッピングする超並列法scATAC-seqの性能を評価した。scATAC-seqを利用することにより、ヒトの血液および基底細胞がんに含まれる単一細胞20万個以上のクロマチンプロファイルが得られた。血液にscATAC-seqを用いると、細胞型特異的なシスおよびトランス調節エレメントがマーカーによらずに同定され、疾患関連のエンハンサー活性がマッピングされて、細胞分化の流れが再現された。基底細胞がんにscATAC-seqを用いると、腫瘍微小環境内の悪性細胞、間質細胞、および免疫細胞の調節ネットワークが明らかにされた。PD-1(programmed cell death 1)タンパク質の遮断の前後で連続的な腫瘍生検試料のscATAC-seqプロファイルを解析すると、治療反応性のT細胞サブセットのクロマチン調節因子が同定され、腫瘍内CD8+ T細胞の疲弊およびCD4+濾胞性ヘルパーT細胞の分化を支配する共通の調節プログラムの存在が明らかになった。scATAC-seqは、さまざまな生物システムにおいて偏りのない遺伝子調節因子の発見を可能にすることが期待される。

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