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ヒト胚性幹細胞由来の心筋細胞で非ヒト霊長類の梗塞心臓の機能を回復させる

Nature Biotechnology 36, 7 doi: 10.1038/nbt.4162

多能性幹細胞由来の心筋細胞移植片は、かなりの量の梗塞心筋を再筋肉化させ、心臓と同期して拍動することができるが、状況によっては心室性不整脈を引き起こすことがある。生理学的に意味のある大型動物モデルでヒト心筋細胞が心臓の機能を回復させることができるかどうかは明らかにされていない。本論文では、広範囲の心筋梗塞を呈するマカクザルに凍結保存したヒト胚性幹細胞由来心筋細胞(hESC-CM)約7億5000万個を移植することにより、その心臓機能が高まったことを示す。左心室全体の駆出率は、hESC-CM移植の1カ月後には対照群の2.5 ± 0.8%に対して処置群では10.6 ± 0.9%に改善し、3カ月後には対照群で3.5%低下したのに対して処置群ではさらに12.4%向上した。移植片は梗塞面積の平均11.6%を占め、宿主の心臓との電気機械的結合を形成し、3カ月後には約99%が心室筋細胞となった。一部の個体は移植片関連の心室性不整脈を起こしたが、これは異所性ペースメーカーとして作用する点源から生じていることが電気的マッピングによって示された。我々のデータは、マカクザルの梗塞心臓のヒト心筋による再筋肉化が左心室機能の持続的な改善をもたらすことを示している。

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