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農業バイオ技術の新たな段階

Nature Biotechnology 30, 3 doi: 10.1038/nbt.2166-1

今月号には、新しい技術が植物育種に与える影響を考察する記事を集めた。2011 年に 1670 万人の生産者が 1 億 6000 万ヘクタールの耕地で遺伝子組み換え種子を使用したことが示すとおり、西ヨーロッパ以外の地域では、伝統的な方法やマーカーを用いた選抜によって作製された作物に加えて、遺伝子組み換え作物が大量に栽培されていることが明らかである [DATA PAGE, p. 207]。

近年、育種家は、Agrobacterium tumefaciensやパーティクルガンによる外来 DNA の導入とは別の農業バイオ技術を模索し始めている。亜鉛フィンガー および転写活性化因子様(TAL)エンドヌクレアーゼによるゲノム工学、オリゴヌクレオチド指定変異、RNA依存性 DNA メチル化、MADS-box 遺伝子による開花促進などがその例である。こうした新技術の導入に伴い、バイオ燃料、工業用化学品、さらにはバイオ医薬品のための作物の作製など、食料生産以外の用途の開発も行われている [NEWS FEATURE, p. 211]。

種子会社としては、実に多彩な選択肢から方法を選べるわけであるが、それは規制当局の頭痛の種となる面もある。現在、規制当局は、従来の組み換え DNA 技術による作物に対する現行規制の網をどの新技術にかけるかという問題で苦労している [NEWS FEATURE, p. 215; FEATURE, p. 231]。

世界の食料安全保障や人口増加、気候変動に関する懸念が解消されない現状を考えると、こうした規制当局での検討の結果として、危険と利益のバランスを適正に保ちながら主要作物の新規形質の開発が促進され、ますます課題が増える今後の農業環境で生産需要が満たされるようにすることが重要である。このような課題への取り組みには果断な政治的リーダーシップが求められる [EDITORIAL, p. 197] が、欧州連合にはそうしたリーダーシップが著しく欠如している [OPINION, p. 208]。

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