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抗アポトーシス遺伝子サバイビンがヒト胚性幹細胞による奇形腫形成に寄与する

Nature Biotechnology 27, 3 doi: 10.1038/nbt.1527

ヒト胚性幹(hES)細胞に由来する奇形腫は、ポリクローン性であるとともに、見かけ上正常な細胞から生ずることにより、腫瘍形成現象のなかで独特である。この過程の理解を深めることは、細胞治療の安全性向上に寄与すると考えられ、腫瘍化開始の基本原理を解明する一助となる可能性もある。 我々は、4種類の独立した細胞株に由来する二倍体hES細胞の移植によって良性の奇形腫が生じ、これに悪性腫瘍および持続性の胚性がん腫様細胞の兆候が認められないことを見出した。これに対し、4種類の細胞株から得たマウス胚性幹(mES)細胞では、常に悪性奇形腫が生じた。網羅的な遺伝子発現解析により、抗アポトーシス腫瘍胎児性遺伝子サバイビン(BIRC5)は、hES細胞および奇形腫で高発現し、胚様体では発現していないことが示された。遺伝学的および薬理学的にサバイビンを除去すると、in vitroでも in vivoでも、hES細胞および奇形腫でアポトーシスが引き起こされた。我々は、in vivoの分化でサバイビンが継続的に発現することが、hES細胞による奇形腫形成に寄与するのであろうと考えている。

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