Review

幹細胞および前駆細胞を用いたヒト中枢神経系の治療

Nature Biotechnology 23, 7 doi: 10.1038/nbt1119

ニューロンにもグリアにも分化可能な多能性の神経幹細胞は、ヒトを含めてあらゆる動物成体の脳室内面を覆っている。さらに、グリア前駆細胞と呼ばれる種々の細胞群もやはり複数の細胞型に分化する能力をもち、大脳皮質下の白質および皮質に散在している。細胞療法に神経前駆細胞を用いる方法は数多く発達してきたが、臨床応用には特に次の4戦略が魅力的である。第一はミエリン障害の治療手段としてのオリゴデンドロサイト前駆細胞の移植、第二はパーキンソン病のようにニューロン表現型がひとつだけ欠失する疾患を治療するための表現型限定的なニューロン前駆細胞の移植、第三は脊髄損傷のように複数の表現型の欠失を特徴とする疾患を治療するための混合型前駆細胞プールの移植、第四は特にハンチントン病のような神経変性疾患で失われたニューロンを復元するための内在性神経前駆細胞の動員である。いずれも細胞を用いた神経学的治療法としてきわめて興味深い戦略であり、近い将来に疾患の標的が示されると考えられる。

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