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安定同位体標識を用いた質量分析法によるMHCリガンドの定量的層別解析

Nature Biotechnology 22, 4 doi: 10.1038/nbt947

現在、対をなす試料、たとえば組織または細胞株のトランスフェクション−非トランスフェクション試料、腫瘍−正常試料、および感染−非感染試料などに関して、MHC提示ペプチドを直接的、定量的に比較することができる方法はない。本論文では、同位体標識試薬を用いて各試料のペプチド比を質量分析法で定量する方法をふたつ紹介する。一方はアセチル化を用いる方法であり、迅速で簡単である。これに対し、もう一方はグアニジン化とニコチニル化を併用する方法であり、ペプチドの荷電状態を維持することができるため、ペプチド回収率および感度が高くなっている。アセチル化し分けることによって、ヒト白血球抗原A(HLA-A)*6801上に過剰提示された固形結腸癌のβカテニン由来ペプチドが同定された。グアニジン化およびニコチニル化をケラチン18トランスフェクション細胞に適用すると、トランスフェクタントのみが提示するペプチドとしてペプチドR L A S Y L D R V(HLA-A*0201)が確認された。このことは、この方法が、対をなす試料を定量比較し、過剰提示されたMHCリガンドを同定することができるものであることを示すものである。

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