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2021年日本国際賞は、がん化の本質を暴いた2氏とシリコン太陽光発電の先駆者に

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210316

国際科学技術財団は2021年1月29日、ジャパンプライズ(日本国際賞)の受賞者を発表した。今年の対象分野は「物理、化学、情報、工学」領域では「資源、エネルギー、環境、社会基盤」分野、「生命、農学、医学」領域では「医学、薬学」分野。

左から「資源、エネルギー、環境、社会基盤」分野の受賞者、マーティン・グリーン氏。「医学、薬学」の受賞者、バート・フォーゲルシュタイン氏とロバート・ワインバーグ氏。 | 拡大する

国際科学技術財団

ジャパンプライズは、独創的かつ飛躍的な成果により科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した科学技術者に贈られる。毎年、受賞対象分野について候補者を推薦で募り、その中から受賞者が選ばれる。

2021年の対象分野は「資源、エネルギー、環境、社会基盤」と「医学、薬学」。前者では、高効率シリコン太陽光発電デバイスの開発者であるマーティン・グリーン氏(Martin A. Green)に、後者では、多段階発がんモデルを提唱し実証したバート・フォーゲルシュタイン氏(Bert Vogelstein)とロバート・ワインバーグ氏(Robert A. Weinberg)に贈られることが発表された。

グリーン氏は1970年代、17%で頭打ちとなっていたpn接合型の結晶シリコン太陽光発電デバイス(電子が流れるp型シリコンと、正孔が流れるn型シリコンをつなげたデバイス)の変換効率を1.5倍向上できることを示唆し、このデバイスの改良に取り組んだ。「電子と正孔の再結合の抑制が重要」と、このデバイスの弱点を早い時期から指摘していた同氏は、1983年にPERC構造を開発。PERC構造は現在、結晶シリコン太陽光発電デバイスの主流になっている。また1999年には、結晶シリコンデバイスのエネルギー変換効率を25%まで向上させた。この数字は、太陽光発電デバイスにおいて結晶シリコンを主役に押し上げただけでなく、再生可能エネルギーの発電コストが火力発電を下回るというパラダイムシフトにもつながった。グリーン氏はまた、この分野の人材育成にも貢献してきたことが評価された。

フォーゲルシュタイン氏とワインバーグ氏は、1個の正常細胞に複数のがん遺伝子とがん抑制遺伝子の変異が複数回起こることでがん細胞へと変化していくという「多段階発がんモデル」に、それぞれ独自に到達、実証した。この過程でワインバーグ氏は、細胞増殖に必須のRASに変異が生じることで正常細胞ががん化することを見いだした。一方、RASのようにがん化を引き起こす「がん遺伝子」を次々と明らかにしていたフォーゲルシュタイン氏は、正常なTP53が「がん抑制遺伝子」として機能していて、この機能が失われるとがんが発生することを突き止めた。発がん機構の本質が見えてきたことで、がんの分子標的を明らかにする研究が活発になり、がんの早期発見・予防・治療に新たな道が切り開かれた。

医学、薬学分野の部会長、谷口維紹氏は受賞者発表記者会見の中で、近年新たに開発されたがん治療薬はほぼ全てと言っても過言ではないほど、両博士が中心になって確立した基本概念に基づいていると述べ、「ライバル関係にあった両氏の共同受賞に意味がある」と語った。

なお、2022年の対象分野は「物理、化学、情報、工学」領域は「物質・材料、生産」、「生命、農学、医学」領域は「生物生産、生態・環境」と発表されている。

(編集部)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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