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揺れ動くイオン輸送酵素

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170932

原文:Nature (2017-05-11) | doi: 10.1038/nature22492 | An ion-transport enzyme that rocks

Kathleen J. Sweadner

ATPアーゼと呼ばれる膜貫通酵素が複雑な運動をすることは、これまでの結晶構造から分かっていた。このたび、この酵素の分子全体が膜の中でロッキングチェアーのように揺れ動くことが明らかになった。

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Callista Images/Getty

陽イオン輸送性ATPアーゼと呼ばれる酵素は、ATP分子に蓄積されたエネルギーを使い、急峻な濃度勾配に逆らって、イオンを細胞膜の壁を越えてポンプする。この目的のために、陽イオン輸送性ATPアーゼはミリ秒単位のゆっくりとした時間スケールで連続的にコンホメーションを変化させ、酵素タンパク質の膜貫通部分を引き上げたり引き下げたりする。その結果、膜貫通部分間の相対的位置は変化する。だが、膜のリン脂質二重層に埋め込まれたタンパク質部分は疎水的であり、この部分を溶液中に押し出すことはエネルギー的に不利なはずだから、どのようにして膜貫通部分の上下運動が可能なのか、その仕組みは長い間謎であった。このほど、東京大学 分子細胞生物学研究所の豊島近と、豊島グループに所属する乗松良行、高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所の清水伸隆および高輝度光科学研究センターの長谷川和也は、カルシウムイオン(Ca2+)ATPアーゼとそれを取り巻くリン脂質の間の相互作用を一連の結晶構造解析によって明らかにし、Nature2017年5月11日号193ページで報告した1。彼らは、この酵素が膜の中でロッキングチェアーのように前後に揺れることによって、疎水性ドメインをリン脂質二重層の中に埋まった状態に保っていることを実証した。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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