Nature ハイライト

古気候学:ゆりかごを揺らす気候

Nature 565, 7738

南アフリカの「人類のゆりかご」地域の洞窟の1つに見られる、分厚いフローストーンの層(白っぽい部分)とその下の堆積物の層(褐色の部分)。
南アフリカの「人類のゆりかご」地域の洞窟の1つに見られる、分厚いフローストーンの層(白っぽい部分)とその下の堆積物の層(褐色の部分)。 | 拡大する

Credit: Robyn Pickering

南アフリカ・ヨハネスブルクの北西に、ヒト族の記録が集中した「人類のゆりかご」と呼ばれる地域がある。ところが、この地域の遺跡の数々には、崩壊した洞窟であるために全ての堆積物が混ざり合っており、洞窟堆積物の正確な年代測定が極めて困難だという問題がある。R Pickeringたちは、これらの洞窟の多くにフローストーン(石筍および鍾乳石)の非常に厚い堆積層があり、これらにウラン–鉛放射年代測定法を用いることが可能であることに気付いた。化石を伴っているのは、フローストーンとフローストーンの間のそれらに挟まれた堆積物層である。彼らは今回、さまざまな洞窟のフローストーンの年代を測定し、それらの相互関係を統計学的手法によって明らかにすることにより、人類のゆりかごの有効な時系列を得ている。これは多くの点でヒト族の記録と一致するが、一致しない点もある。フローストーンは形成するのに水が必要で、洞窟が外界から閉ざされた湿潤期に成長した。一方、化石を含む堆積物は、気候が乾燥して侵食が大きくなり、洞窟が開放された時期に蓄積した。これは、人類のゆりかごの化石記録が乾燥した天候に適応した動物相へと大きく偏ることを意味している。

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