Nature ハイライト

構造生物学:多剤耐性の構造基盤

Nature 524, 7563

病原性細菌の間で多剤耐性が広がるのは、主として「持続生残菌」の存在によっている。生残菌は表現型変異体で、休眠状態のままでいるために、活発に増殖中の細胞だけに効果がある抗生物質に対して感受性を示さない。今回M Schumacherたちは、大腸菌(Escherichia coli)では、野生型HipA(タンパク合成を阻害して細胞を休眠状態に送り込むセリンプロテインキナーゼ)が持続生残菌形成に関わっていること、またこのような生残菌の出現頻度を高めるhipA7変異体が尿路感染症患者に存在することを明らかにした。さらに、プロモーターDNAとHipA–HipB複合体からなる転写自己抑制複合体の構造が決定され、これらの構造から、持続生残菌を多数発生させる変異は、HipA–HipA間の結合を妨げてHipAを高次複合体から切り離し、多剤耐性が生じるきっかけを作ることが示された。

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