Nature ハイライト

神経科学:恐怖と報酬間の記憶の切り替え

Nature 513, 7518

記憶は孤立して作られるわけではなく、情動的価値、すなわち誘意性を伴うのが通常であるが、誘意性は必ずしも固定されているわけではない。しかし、記憶と誘意性の連合や、誘意性切り替えの基盤となる機構は未解明である。今回、利根川進(理研-MIT神経回路遺伝学研究センター)たちは、特定の恐怖(負の誘意性)または報酬(正の誘意性)に基づく記憶痕跡(エングラム)を光遺伝学的手法で標識し、その後の人為的な記憶の再活性化を可能にした。記憶エングラムを持つ細胞集団は、エングラムの活性化と組み合わせた2度目の訓練によって、逆の誘意性と再連合させることができた。こうした変化は、歯状回内にあるエングラム細胞の内部で明らかだった。従って、歯状回の記憶エングラム細胞は誘意性の連合に関して可塑性を示しており、これらのデータから情動記憶の連合は、回路レベルで変更可能であると考えられる。

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