Nature ハイライト

Cover Story:Y染色体の存在理由:哺乳類Y染色体の進化と多数の機能

Nature 508, 7497

哺乳類のY染色体は性決定と雄の生殖能力に関わることが知られている。しかし、Y染色体は反復配列を含むことが多く、ゲノムの他の部分よりも再構成が難しかった。H Kaessmannたちは、この問題に対処するために、雄特異的なRNA/ゲノム塩基配列解読データに基づく新たな転写産物アセンブリー技術を開発した。そして、主要な哺乳類系列を代表する15種でこの方法を使ってY染色体の進化について調べ、性染色体について、互いに独立した起源が哺乳類で2つ、鳥類で1つ存在することを示す証拠を得た。KaessmannたちのY/W遺伝子レパートリーの解析は、いくつかの遺伝子は空間的・時間的発現変化の結果として性決定における新規な機能を進化させたが、ほとんどのY遺伝子は、少なくとも初期には、遺伝子量の制約が生じた結果として、そのまま存続していた可能性を示唆している。もう1つの研究でD Bellottたちは、有胎盤哺乳類7種と有袋類1種に由来するX–Y遺伝子対のゲノム塩基配列の包括的な比較解析により、Y染色体の進化を再構築した。進化は、全身にわたって遺伝子発現を調節している相同なX–Y遺伝子対の元来の遺伝子量を維持するために、ヒトY染色体の遺伝子含量を選択により簡素化したというのが、彼らの結論である。さらに、これらの遺伝子が、Y染色体を雄の生存に不可欠なものとし、健康時と罹患時の性差の一因となっていると彼らは考えている。(Articles pp.488, 494; N&V p.463)

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