Nature ハイライト

微生物学:赤痢アメーバは腸を食いちぎる

Nature 508, 7497

ヒトT細胞株であるJurkat細胞(ピンク色)に食い付く赤痢アメーバ(緑色)。
ヒトT細胞株であるJurkat細胞(ピンク色)に食い付く赤痢アメーバ(緑色)。 | 拡大する

Credit: Katy Ralston

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は、途上国で見られる小児の致命的な下痢症を引き起こす。その名称のhistolyticaは宿主の組織を破壊することによっている(histo = 組織、lysis = 溶解)が、この組織破壊作用の基盤となる仕組みは解明されていない。今回K Ralstonたちは、このアメーバが、腸管上皮細胞を少しずつ食いちぎって破片を取り込むこと、それによって上皮細胞が死んでしまうことを明らかにした。この過程は、免疫細胞間で見られるトロゴサイトーシス(細胞膜断片が抗原提示細胞からリンパ球に送られる過程)に似ている。上皮細胞を殺すには食いちぎった細胞片を取り込むことが必要であり、この機構は組織培養でも、また腸管移植片への侵入の際にも作動している。著者たちは、トロゴサイトーシスを介した細胞間での膜断片受け渡しは、進化の上でこれまで考えられていたよりも古くかつ広範に存在したらしいと考えている。今回の知見はまた、アメーバのトロゴサイトーシスが、顧みられない病気の中でも重要なアメーバ症に対する治療薬の新規標的になる可能性を明らかにしている。

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