Nature ハイライト 脳:うつ病の症状は分割・統治が可能? 2012年7月12日 Nature 487, 7406 慢性的なストレスはうつ病の複数の症状につながることが知られている。そうした症状には、喜びを感じられない(無快感症)、異常な食生活、行動に表れる絶望などがあるが、多様な症状にかかわっているシナプスの適応についてはよくわかっていない。今回、マウスを使った研究で、快感や報酬探求行動と関連する脳部位である側坐核中のD1ドーパミン受容体を発現しているニューロン上にある興奮性シナプスの強度を、ストレスが低下させることが明らかになった。低下は、メラノコルチン4型受容体の活性化を介して起こる。これらの受容体の働きを遮断すると、摂餌行動とコカイン報酬応答に関するストレスの影響は防止されたが、行動に表れる絶望は防止されなかった。これらの結果は、うつ病の個々の症状をもたらす神経回路が分離していることの証拠となり、特定の行動を標的とする治療法を開発できる可能性が考えられる。 2012年7月12日号の Nature ハイライト 脳:うつ病の症状は分割・統治が可能? 遺伝:臨床に使えるゲノム塩基配列解読法 生化学:DNA修復反応を詳細に調べる 宇宙:暗黒物質に光を当てる 工学:流砂の謎 材料:賢い柔軟材料 進化:鳥類はいつまでも若々しい? 生態:相利共生ネットワークで重要となる数は? 神経:霊長類の神経回路に手が届く 目次へ戻る