Nature ハイライト

発生:ヒト卵母細胞は体細胞を多能性状態へ再プログラム化する

Nature 478, 7367

ドナーの核を持つ卵を作製する体細胞核移植という技術によって体細胞核を再プログラム化し、胚性幹(ES)細胞を誘導することは、ヒト以外の哺乳類では確立された実験技術だが、ヒト細胞ではこれまで不可能だった。しかし、D Egliたちは今回、ヒト卵母細胞への体細胞ゲノム移植によって、三倍体のヒト多能性幹細胞株の誘導に成功したことを報告している。従来の手法(卵母細胞から核を摘出した後にドナー細胞の核体と融合させる)を用いて再構成されたヒト卵母細胞は、卵割期で例外なく発生が停止してしまうのだが、卵母細胞ゲノムを除去せずに体細胞ゲノムを追加することで作製された三倍体細胞は効率よく胚盤胞期まで発生する。この研究は本来の形の二倍体核移植によるES細胞の作製までには至っていないものの、そのような核の再プログラム化がヒトでも可能であることを示している。この結果は、再生医学や生殖医学、発生生物学や幹細胞の多能性研究に関連してくる。また、利他的な卵子提供に関連する倫理的問題としても関心をひくだろう。この研究とその倫理的な意味については、News & ViewsでG DaleyとJ H Solbakkが、またCorrespondenceでI HyunとP Tesarが論じている。

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