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地球:太古の地球が冷えなかった理由

Nature 429, 6990

現在の太陽は22億年前よりずっと明るく輝いている。大昔太陽の光は確かにとても弱かったのに、予想に反して地球が長期にわたって冷たかったわけではないことは疑問とされてきた。地球が冷たくならなかった理由は、豊富なメタンによって引き起こされた強い温室効果が太陽光の乏しさを補っていたためだとこれまで考えられていた。メタンは、今日の大気中にはわずかしか含まれていないが、赤外線を極めて強く吸収する。ところで、温室効果の犯人として真っ先に名前の挙がる二酸化炭素がこの話にでてこない。なぜなのだろう。二酸化炭素は当時、大気中に微量にしか含まれていなかったというのがその論拠である。菱鉄鉱と呼ばれる鉱物がほとんど見つからないことがその証拠とされている。菱鉄鉱は炭酸第一鉄を含むので、二酸化炭素が大気中の熱収支に影響を与えるほど十分豊富に存在したことを示す指標となりえるのだ。 これに対して大本洋たちが反論している。菱鉄鉱が見つからないことは二酸化炭素が少なかったこと以外にも、いくつかの理由があるのではないかというわけだ。酸素の存在がその1つである。実際に菱鉄鉱は、酸素の乏しい条件で積もった古代の堆積物中に見つかることがある。著者たちによれば、このような要素を加味することで、22億年前の地球は、二酸化炭素濃度が現在より100倍高い大気に包まれていたという、より理にかなった状況が考えられる。つまりメタンによる寄与をそれほど重要視しなくても、初期地球上の海を凍らせることなく保つために必要な温室効果が二酸化炭素だけでもたらされていた可能性がある。

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