Nature ハイライト

海洋:毒を使った珪藻の謀略

Nature 429, 6990

珪藻と呼ばれる単細胞の藻類は、見た目は無害な食糧資源となるプランクトンだが、実はそうではない。A Ianoraたちによると、珪藻類は世代をまたぐ化学兵器戦を仕掛けており、自分たちを食べる甲殻類の発生を阻害するような毒物を放出しているのだという。 この発見が、海洋生態学でよく浮かび上がる疑問を解決しそうだ。海には春の訪れを知らせるかのように珪藻類が大量発生するが、橈脚類(カイアシ類ともいう)などの甲殻類はこれらの珪藻類を全部食べきることはなく、そのため余った大量の珪藻類が海洋底に沈んでしまう。その理由が今までよくわからなかったのだが、Ianoraたちは今回、春早くに大量発生した珪藻類の一部は押しつぶされると毒素を放出し、これで自分たちを食べた甲殻類の子孫を殺してしまうことを明らかにした。この仕組みによって、草食動物に食べられないようにするのではなく、その年に生まれて越冬し、翌年早くに大量発生する珪藻類を食べることになる甲殻類幼生の数を減少させてしまうのだ。

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