Nature ハイライト

遺伝:植物多様性の遺伝学

Nature 465, 7298

大規模な全ゲノム関連(genome-wide association;GWA)解析研究は、ヒトのゲノミクスで重要な手法となっており、そのほとんどは疾患に焦点を合わせたものだが、皮膚の色のような適応的変動に注目しているものもある。今回、この手法が植物でも役に立つことが明らかにされた。Atwellたちは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の自然発生した近交系でみられる100種類以上の表現型についてGWA研究を行った。その結果は、有意な関連が認められるもの(通常は単一遺伝子について)から、解釈が困難で、複雑な遺伝的性質と集団構造の交絡を示すものまで、広範囲にわたっている。もう1つのTodescoたちの論文では、この技術を用いれば、大きな影響を及ぼす遺伝子座の検出が可能であることを明らかにしている。順遺伝学とGWA解析を用いて、シロイヌナズナのACD6という単一遺伝子座の変異が、栄養成長の表現型変異だけでなく、感染に対する抵抗性の変動の基盤となっていることが示された。この遺伝子座の対立遺伝子の1つを介して抵抗性が強力に増強されることは、この対立遺伝子により新葉の産生が大きく減少するのにもかかわらず、世界の至るところの自然個体群にこの遺伝子が存在し続けていることの説明となる。

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