Nature ハイライト

微生物学:結核菌由来VII型分泌装置の完全な構造

Nature 593, 7859

ヒトの病原菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、機能が異なるVII型分泌装置(T7SS)を5つ(ESX-1からESX-5)持っていて、これらは毒性因子の細胞からの運び出しと栄養素の細胞内への輸送に使われている。発症にこれらが担う中心的役割を考えれば、T7SSは抗結核薬の開発のための重要な標的である。病原性を持たないスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)株由来のESX-3の部分構造はすでに解かれているが、ヒトに感染する結核菌の完全な構造はまだ得られていなかった。今回T Marlovitsたちは、ESX-5集合体のクライオ電子顕微鏡法によって得た完全な(無傷の)構造を報告し、この集合体が165本の膜貫通ヘリックスからなり、3つの二量体からなる三量体としてMycP5プロテアーゼにより安定化されていることを明らかにしている。また、この構造によって、分泌経路だけでなく、細胞質ゾル中の高度に動的なドメインが基質認識と選択について果たしていると思われる役割も示唆された。

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