Nature ハイライト
神経免疫学:アストロサイトは神経回路恒常性のために成体海馬シナプスのファゴサイトーシスを行う
Nature 590, 7847
成体の海馬では、シナプスの形成と除去が絶えず行われている。しかし、成体脳でのシナプス除去の正確な機能やその調節機構については、ほとんど分かっていない。今回我々は、アストロサイトのファゴサイトーシスが、海馬シナプスの適切な接続性と可塑性の維持に重要であることを示す。我々は蛍光ファゴサイトーシスレポーターを用いることで、成体マウス海馬のCA1領域において、興奮性シナプスと抑制性シナプスがグリア細胞によるファゴサイトーシスによって除去されることを見いだした。意外にも、興奮性シナプスの神経活動依存的な除去には、アストロサイトが主要な役割を担っていることが分かった。さらに、アストロサイトでファゴサイトーシス受容体MEGF10を欠失させたマウスでは、興奮性シナプスの除去が減少し、その結果、機能が障害されたシナプスが過剰に蓄積した。また、Megf10ノックアウトマウスでは、長期的なシナプス可塑性の異常と海馬記憶形成の障害が見られた。まとめると我々のデータは、成体の海馬では、アストロサイトがMEGF10を介して不要な興奮性シナプス接続を除去しており、このアストロサイトの機能が、神経回路接続性の維持や、それによる認知機能の支持に非常に重要であることを示す強力な証拠を提示している。
2021年2月25日号の Nature ハイライト
原子核物理学:散らかった陽子の内部をじっくりと見る
実験物理学:定常状態マイクロバンチングに向けて
材料科学:意外な相乗効果
植物科学:イネの窒素利用効率を高める遺伝子
細胞生物学:栄養外胚葉細胞は、アポトーシス細胞の残屑を分散させ、ファゴサイトーシスで除去する
コロナウイルス:精製したポリクローナル抗体はSARS-CoV-2からアカゲザルを防御できる
コロナウイルス:COVID-19肺炎の細胞機構の解明
膵臓腫瘍:膵臓がんのイニシエーション
DNA修復:DNA二本鎖切断修復の際のループ押し出し機構
ウイルス学:ロタウイルスが細胞に侵入する仕組み