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ウイルス学:エンベロープを持たないウイルスの表面で起こる侵入タンパク質の機能を変更する再折りたたみ

Nature 590, 7847

エンベロープを持たないウイルスがゲノムを標的細胞へと送り込むには、膜を損傷する必要がある。ロタウイルスの場合、膜孔の形成は、ウイルス外殻のタンパク質VP4の主な役割となっている。今回我々は、クライオ電子顕微鏡を使ってVP4がこの機能をどのようにして果たすのかを解明した。VP4は、VP8*とVP5*への切断によって活性化されると、ウイルス粒子表面で「直立型」から「反転型」へのコンホメーション再編成を起こすことが分かった。この逆転型構造では、それまで埋もれていた「足」ドメインが外側に突き出して、付着している宿主細胞膜に刺さる。細胞に入り込むウイルス粒子のクライオ電子線トモグラフィー像は、この状況と一致する。また、VP4のジスルフィド変異体を用いることにより、これら2つのコンホメーションの間で遷移中の中間体と考えられる構造が安定化された。これらの結果は、ロタウイルスが標的細胞の膜へと侵入する第一段階の分子機構を明らかにしており、これは他のウイルスについて推定されている侵入機構との類似性を示唆している。

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