Nature ハイライト
ウイルス学:エンベロープを持たないウイルスの表面で起こる侵入タンパク質の機能を変更する再折りたたみ
Nature 590, 7847
エンベロープを持たないウイルスがゲノムを標的細胞へと送り込むには、膜を損傷する必要がある。ロタウイルスの場合、膜孔の形成は、ウイルス外殻のタンパク質VP4の主な役割となっている。今回我々は、クライオ電子顕微鏡を使ってVP4がこの機能をどのようにして果たすのかを解明した。VP4は、VP8*とVP5*への切断によって活性化されると、ウイルス粒子表面で「直立型」から「反転型」へのコンホメーション再編成を起こすことが分かった。この逆転型構造では、それまで埋もれていた「足」ドメインが外側に突き出して、付着している宿主細胞膜に刺さる。細胞に入り込むウイルス粒子のクライオ電子線トモグラフィー像は、この状況と一致する。また、VP4のジスルフィド変異体を用いることにより、これら2つのコンホメーションの間で遷移中の中間体と考えられる構造が安定化された。これらの結果は、ロタウイルスが標的細胞の膜へと侵入する第一段階の分子機構を明らかにしており、これは他のウイルスについて推定されている侵入機構との類似性を示唆している。
2021年2月25日号の Nature ハイライト
原子核物理学:散らかった陽子の内部をじっくりと見る
実験物理学:定常状態マイクロバンチングに向けて
材料科学:意外な相乗効果
植物科学:イネの窒素利用効率を高める遺伝子
細胞生物学:栄養外胚葉細胞は、アポトーシス細胞の残屑を分散させ、ファゴサイトーシスで除去する
コロナウイルス:精製したポリクローナル抗体はSARS-CoV-2からアカゲザルを防御できる
コロナウイルス:COVID-19肺炎の細胞機構の解明
膵臓腫瘍:膵臓がんのイニシエーション
DNA修復:DNA二本鎖切断修復の際のループ押し出し機構
ウイルス学:ロタウイルスが細胞に侵入する仕組み