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植物科学:SHR–SCRモジュールはマメ科植物の皮層細胞の運命を指定して根粒形成を可能にする

Nature 589, 7843

マメ科植物は他の植物と異なり、窒素固定を行う根粒菌と共生関係を構築する能力を持つ。マメ科植物の根の皮層細胞に固有の特性が、根粒菌との共生関係の初期の確立を可能にしたと理論化されてきた。今回我々は、マメ科植物タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)の皮層細胞では、SHORTROOT–SCARECROW(SHR–SCR)幹細胞プログラムが働いて、それらの独特な運命を指定することを示す。調節エレメントが皮層でのSCRの発現を駆動し、タルウマゴヤシの皮層細胞では中心柱で発現されたSHRタンパク質が蓄積するが、これはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では起こらないことが分かった。皮層のSHR–SCRネットワークはマメ科植物全体で保存されており、根粒菌の出すシグナルに応答し、de novoの根粒器官形成と根粒菌の受容に向けて、マメ科植物特異的な皮層細胞分裂を開始させる。マメ科植物におけるSHRとSCRの異所的な活性化は、根の皮層細胞分裂の誘導に十分だった。これらの知見は、マメ科植物では、皮層のSHR–SCRモジュールの獲得によって、根粒菌の感染と連動した細胞分裂が可能になったことを示唆している。我々は、このモジュール獲得が、根粒菌の細胞内共生の進化に中心的な役割を果たしたと提案する。

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