Nature ハイライト

細胞生物学:加齢の特徴

Nature 583, 7817

年齢は単一のものとしては最大の疾患のリスク要因であり、加齢や機能低下を引き起こす要因を理解することは、健康寿命の改善に不可欠である。今回2報の論文によって、加齢の際に関与する過程の実証に向けた大きな前進がもたらされている。1報目の論文では、マウスの生涯にわたる単一細胞トランスクリプトームアトラスであるTabula Muris Senisから得られた、加齢の重要な特徴が広範な組織や細胞タイプに反映される仕組みについての豊富な新しい分子情報が提示されている。これによって、細胞特異的な変化や器官の細胞組成の変化が明らかになった。2報目の論文では、マウスの生涯にわたるさまざまな月齢での多様な器官のバルクRNA塩基配列解読や血漿プロテオミクスが、Tabula Murisのデータと統合されている。これによって、加齢に伴う発現の推移が明らかになり、特定の遺伝子セットが組織間で同様に発現すること、違いは発現開始月齢と発現量のみであることが分かった。加齢の際に免疫細胞の広範な活性化が起こることは明らかで、これは最初に中年期の貯蔵白色脂肪で見られる。組織における遺伝子発現の推移は、血漿中の対応するタンパク質レベルと相関するので、体循環の加齢に関与している可能性がある。総合するとこれらの論文は、加齢の進行を実証するものであり、老齢での健康の衰えの原因を追跡するための基礎となる。

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