Nature ハイライト

古生物学:二足歩行への道の途中

Nature 575, 7783

<i>Danuvius guggenmosi</i>の雄の個体の前肢の骨。
Danuvius guggenmosiの雄の個体の前肢の骨。 | 拡大する

Credit: Christoph Jäckle

今回M Böhmeたちによって、ドイツで中新世(約1170万年前)の未知の絶滅類人猿種が発見され、二足歩行を行うようになる前の類人猿の姿に光が当てられている。この化石類人猿は、前肢で木の枝からぶら下がることができたと考えられる。一方、その後肢は、ロコモーションにおいて脚が腕と同程度の貢献しかしないテナガザルやオランウータンとは異なり、習慣的にほぼ真っすぐに保たれていて、蹠行性だった(つまり、足裏全体を着地させて歩行していた)が、母趾の物をつかむ力は強く、細い枝の上では足で枝をつかみ体を支えていたと考えられる。この類人猿が、他の化石類人猿とヒト族の「共通祖先」や「ミッシングリンク」だったと示されたわけではないが(著者たちは今回、系統発生学的な再構築は試みていない)、これらの知見は類人猿が地上に降りる前から後肢での歩行を開始していた様子を物語っている。

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