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免疫:「スペイン風邪」ウイルスの威力

p.267

1918年に起こった「スペイン風邪」インフルエンザの世界的大流行は異例に深刻なもので、およそ5000万人が死亡した。しかし、なぜそれほど壊滅的だったのだろうか。二次的感染治療用の抗生物質がなかったことや、社会経済的な諸要因が関係していた可能性もあるが、再構築された1918年ウイルスをヒト以外の霊長類に感染させた実験から、このウイルス自体のもつ致死的な性質が大きな要因であったことが今回示唆された。実際、このウイルスは、ヒト以外の霊長類に実験的に感染させた場合に死をもたらす唯一のインフルエンザウイルスである。そして、1918年ウイルスはほかのヒトインフルエンザウイルスと異なり、自然免疫を抑制する。最近広まっているH5N1ウイルスも、1918年ウイルスに似た重症の肺感染を引き起こし、また自然免疫応答を抑制するので、宿主の自然免疫応答を保護するような治療により、こうしたインフルエンザウイルスによる感染の重症度を軽減できるかもしれない。

doi: 10.1038/445267a

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気候:モンスーンに脅かされるオーストラレーシア

p.270

塊状サンゴから得られた過去6300年間の気候記録を綿密に再構築することにより、インド洋域の降水に大きな影響を与える気候振動であるインド洋ダイポールモード現象のこれまで知られていなかった変化の証拠が明らかになった。この新しいデータから、インドネシアで干ばつが長引くこととアジアモンスーンの降水が多い時期との間に意外なつながりがあることがわかった。したがって、アジアモンスーンの強さの今後の変化は、これまで予測されていたよりも広範囲に影響を及ぼす可能性が高い。モンスーンの強さの変化の予測は、主としてアジアとインドに与える影響に焦点がしぼられていたが、新たなデータは、オーストラレーシア全域に及ぶ悪影響を示唆している。

doi: 10.1038/445270a

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細胞:複製の引き金

A switch for S phase p.272

サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期などのさまざまな細胞活動を制御している。DNA複製の開始時期や細胞の分裂時期を決めるのも、この種のキナーゼの1つである。2つの研究グループが、DNA複製に不可欠なCDK標的がSld2とSld3であることを突き止めた。どちらの研究も酵母について行われたものだが、同様のシステムが高等真核生物でも保存されていると思われる。今回の知見は、DNA複製の分子機構や、細胞増殖制御ががんの化学療法につながる可能性を考察する際の新たな手がかりとなる。

doi: 10.1038/445272a

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見えない宇宙:暗黒物質の分布マップから明らかになった宇宙の骨格

p.274

表紙は、今回初めて作られた、宇宙における「暗黒物質(ダークマター)」の大規模分布を示すマップの一部である。これは、ハッブル宇宙望遠鏡によるこれまでで最大規模の探査で得られた画像を使って作成された。暗黒物質は、宇宙の大部分の質量を占める謎の物質だが、光を反射も放射もしないので直接的に観測することはできない。しかし暗黒物質は、遠方の銀河からの光がその前景に何らかの物質が分布していれば曲げられるという重力レンズ効果によって、間接的に観測することができる。今回の新しいマップでは、暗黒物質のフィラメントの網目状構造が時間の経過とともに成長し、巨大なボイド(空洞)で隔てられているようすがみられる。通常の物質である「バリオン」粒子は、宇宙の全質量のうちのたった6分の1を占めているにすぎないが、重力による構造形成の過程で、暗黒物質のこうした骨格の内部にあらゆる星や銀河、惑星を形成する。 (表紙:NASA/ESA/R Massey)

doi: 10.1038/nature05522

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