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#scidata16 基調講演ハイライト:「若手研究者のための研究データ管理」

#scidata16 keynote highlights: “Research data management for early career researchers”

1 Dec 2016

データ管理は、科学研究に欠かせない要素であり、若手研究者にとっては、データに忙殺される前に取り組むべき課題である、とErica Brockmeierは言う。

博士課程の学生や若手研究者の作業リストは、論文作成や承認申請から専門分野の最新の研究結果を把握することなどでぎっしり詰まっている。#Scidata16 会議の3番目の基調講演のテーマは、研究キャリアのもうひとつの重要な側面、すなわち「データ管理」であった。エディンバラ大学を拠点とするKevin Ashley氏のプレゼンは、このテーマについて考えさせるものだった。スコットランド、エディンバラのデジタルキュレーションセンター所長であるAshley氏と彼のチームは、データ管理とデータ再利用のすべての側面に関するコンサルタントサービスや、アドバイス、ガイダンス、トレーニングを研究者に提供している。

なぜ研究者にデータ管理が必要なのか?Ashley氏は、研究データの質の向上、資金提供者への見返りとしての価値の向上、研究進捗の迅速化の確約などといった、優れたデータ管理がもたらす数多くのメリットを説明した。他の研究グループから得たデータの再利用は、一度の投資を複数のプロジェクトで利用できることになるため、経済的だ。さらに、他者のデータを再利用する方法を知ることで、新発表のたびに新たなデータセットを生成する時間が省ける。

若手研究者としては、自分のラボを持ち、大規模なプロジェクトやデータセットに関わるようになるまで、データ管理について心配することを先延ばしできないものかと考えるかもしれない。しかし、Ashley氏の基調講演は、プロジェクトの初期段階および研究者としてのキャリアの初期段階においてこそいかにデータ管理が重要かを訴えるものだ。データ管理は、プロジェクトの最後にやる作業ではなく、新しい事を開始した後に思い付きで追加するものでもない。データ管理をうまく実施することは、研究を概念化した時から始まる。対象とするデータの収集・作成の計画策定もプロジェクトに織り込むこと、そして、それらのデータを自分の目標だけでなく他の研究者たちにも利用してもらうためにどうすればよいかを検討することだ。

Ashley氏は、天文学の観点から、優れたデータキュレーションのパワーについて、素晴らしい例を提供してくれた。何千年もの間、天文学者たちは星を観測してきたが、最先端の機器を持つ現代人にとっては、古代の天文学者の観測結果など、もはや利用不可能かと思われる。しかし、天文学がここまで進歩したのは、歴代の天文学者たちが大昔から残る記録を基に研究を積み重ねてきたからだ。地球の自転に関する中国やバビロニアの観測から、星座表を作成し日面通過を測定した8世紀の天文学者に至るまで、数千年に渡り収集されたデータは現代の天文学にとっても、地球の自転の変化を測定するなどの末端部で未だ有用である。Ashley氏が言うように「研究者たちのデータの価値は、時を超える」のだ。

近年の天文学者は、アーカイブされた観測結果を活用して、自分の研究課題をさらに展開することにも精通している。ハッブル望遠鏡などの大規模な協働観測ツールは、競争力の高いデータ収集場所となっている。天文学者は、歴史的成果を基盤に前進するのみでなく、アーカイブされたデータ、つまり自分自身で収集したデータ以外のデータについて、これらを再利用し、結果を再解析することにも長けている。新しい科学データの取得が困難または高価となった一方、アーカイブされた科学データが普及しているこの時代、若手の科学者・研究者に欠かせないのは、他者の実験や観測値を活用し効果的に分析できるスキルだ。

我々自身のデータやプロジェクトが過去の偉大な天文学者の研究ほど影響力があるとは断言できないが、高品質のデータセットであれば、時の試練にも十分耐えられるはずだ。管理が行き届き、他者のアクセスや解釈を可能としているデータであれば、研究者にとっては一度限りのプロジェクトであっても、その影響は、成果の出版やキャリアが終わった後も長く存続するだろう。すなわち、若手研究者たちは、大量のデータに忙殺される前に、データ管理に要求されるスキルを磨くことに注力すべきである。

何から着手すべきか迷っている人には、手始めに「DCCウェブサイト」からトレーニングイベント情報、プロジェクト管理のガイドライン、追加リソースなどを取得し、自分のリサーチデータ管理スキル育成を図ることを奨励する。Ashley氏のコメントによると、「これは、やることリストの項目がひとつ増えた以上の意味がある。適正に管理されたデータを使わずに研究を進めることは、良いサイエンスを実践していないこと」になるのだ。

Erica Brockmeier氏は、 リバプール大学で計算毒性学の博士課程修了者。ブロックマイヤー氏は、博士号課程の学生や若手研究者向けの週間専門人材育成ブログ「Science with Style」の論説記者でもある。ブロックマイヤー氏の科学誌レポーターとしてのキャリアを築くまでの過程について興味がある方は、@EKBrockmeierでフォローできる。

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