Perspective

精神疾患に対する薬物ターゲティング ― 基礎研究の応用段階で生じるロスを克服する方法とは

Nature Reviews Drug Discovery 23, 3 doi: 10.1038/s41573-023-00847-7

精神科薬の開発には多大な努力と投資がなされているにもかかわらず、ここ数十年間に多くの臨床試験が失敗に終わっており、臨床医は何年も前に開発された医薬をいまだに処方している。新薬開発の行き詰まりに関する議論では複数の理由が挙がっているが、本論文では、有力視されている生物学的理由の1つである前臨床モデルの薬剤標的とそれに対応する患者の薬剤標的の性質の違いという点を中心に論じる。そして我々は、シングルセル解析の技術的進歩に基づいた重要な提案を行う。すなわち、現在利用可能な知識ならびにシングルセル研究および空間オミクス研究によって新たに得られた知識を用いて、前臨床研究および特に臨床研究を開始する前に前臨床モデルの応用段階での予測性を評価し、その改善を図る可能性も秘めた枠組みを提案する。この提案によって、前臨床モデルが改善され、臨床試験における薬物評価能力が向上して、費用のかかる後期臨床試験の失敗率が低下し、最終的には精神科薬の創薬および開発が恩恵を受けると、我々は確信している。

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