Review Article

がん治療薬の開発に前臨床モデルの予測力を利用する

Nature Reviews Drug Discovery 21, 2 doi: 10.1038/s41573-021-00301-6

近年、細胞過程の分子基盤の解明、有望な治療標的の特定、細胞過程の調節の全体像の研究が進み、がん治療薬開発の分野は、前例のないエキサイティングな時代に入った。しかし、医薬品の開発過程は、高いコスト、長い期間と非常に高い損耗率に悩まされ続けている。がん治療薬開発における損耗率が高くなっている大きな原因の1つは、前臨床予測モデルの欠如だと考えられている。前臨床研究で意味があって予測力のある結果を得るためには、関連性のある生物学的論点を正確に理解し、患者の状況を反映するようにモデル系を調整することが必要である。そうすることで、フォワードトランスレーション(基礎研究における発見を実用化する過程)とリバーストランスレーション(臨床所見の機構的基盤を解明する過程)を実施できるようになり、有効な抗がん治療法を開発する能力が大いに高まる。本総説では、がんの分子標的治療法の前臨床研究から臨床へのトランスレーションの可能性に関わる問題点を概説し、成功するリバーストランスレーションの考え方とリバーストランスレーションの成功例を示し、例えば、プログラム開発過程全体で、前臨床モデルの長所と短所を追跡調査することを含めて、患者における腫瘍生物学的徴候と前臨床モデル系の整合性を高める必要性を明確に示す。

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