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RAS標的薬:創薬は実現するか?

Nature Reviews Drug Discovery 19, 8 doi: 10.1038/s41573-020-0068-6

RASKRASNRASHRAS)は、がんにおいて最も頻繁に変異する遺伝子ファミリーであり、そのため、有効なRAS阻害剤を追い求める研究が30年以上も続けられてきた。しかし、10年前でさえRAS阻害剤の研究開発は停滞し、RASはアンドラッガブル(創薬が困難)とされていた。それが、非小細胞肺がんにおいて最も頻繁に変異するタイプのRASであるKRASG12Cに対する対立遺伝子特異的な共有結合阻害剤の開発が成功したために、RAS誘導性がんを治療するための最良の治療戦略を評価する機会が得られた。この治療薬の有効性に影響を及ぼす可能性が高いのが、変異特異的な生化学的特性と原発組織である。現在のところ、対立遺伝子特異的阻害剤による変異型RASの直接阻害が、最良の治療法となっている。RAS活性化経路やRASエフェクター経路を標的とする治療薬は、こうしたRAS直接阻害剤や免疫チェックポイント阻害剤、T細胞標的療法と組み合わせることで、RAS変異型腫瘍を治療できる可能性がある。本論文では、変異型RASタンパク質を標的とする治療法の開発における最近の進展を概説し、併用療法を含めてこの治療法の今後の課題を考察する。

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