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偽キナーゼを薬理学的標的とする可能性

Nature Reviews Drug Discovery 18, 7 doi: 10.1038/s41573-019-0018-3

偽キナーゼは、プロテインキナーゼのスーパーファミリーに属するキナーゼだが、主に非触媒的機構によってシグナルを伝達する。多くの偽キナーゼがヒトのさまざまな疾患の病態の一因となっているにもかかわらず、偽キナーゼは、その生物学的機能の調節に関連した課題のために、薬剤標的としてはまだほとんど研究されていない。偽キナーゼの構造や生理学的役割に対する理解が過去10年の間に大幅に向上し、偽キナーゼと、その偽キナーゼに対応する触媒活性を持つキナーゼとの興味深い類似性が明らかになっている。偽キナーゼは、触媒活性を持つキナーゼに見られるのに類似したコンフォメーションをとることが多く、金属カチオンとヌクレオチドの両方あるいはどちらか一方と結合できるものもある。臨床で承認された複数のキナーゼ阻害剤は、触媒活性を持つキナーゼの非触媒的機能に影響を及ぼすことが示されており、このことから、偽キナーゼの類似の性質を薬理学的に調節できるかもしれないと期待されている。本総説では、疾患における偽キナーゼの既知の役割、偽キナーゼの独特な構造的特徴、そして偽キナーゼを標的とした治療法の開発に向けてなされてきた進展について考察する。

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