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遺伝性疾患に対して造血幹細胞を標的とする遺伝子治療:その進歩と課題

Nature Reviews Drug Discovery 18, 6 doi: 10.1038/s41573-019-0020-9

原発性免疫不全症の治療において造血幹細胞と造血前駆細胞の遺伝子操作が、同種移植に代わり得ることが先駆的な遺伝子治療の臨床試験で明らかになった。また、初期の臨床試験では、第一世代のガンマレトロウイルスベクターに関連した挿入変異誘発とがん遺伝子のトランス活性化のリスクも強調され、これらの事象が、より安全な自己不活性化型レンチウイルスベクターやガンマレトロウイルスベクターの開発の引き金となった。これらのレンチウイルスベクターは、10種類の血液疾患(原発性免疫不全症、異常ヘモグロビン症、代謝疾患など)の患者200人以上の治療とがん治療のためのキメラ抗原受容体T細胞の作製に用いられ、成功を収めた。一方、遺伝子治療の適用対象が将来的に、疾患環境によって造血幹細胞と造血前駆細胞が変化し得る複雑度の高い疾患に広がるのであれば、炎症の際の有効な再構成などのいくつかの課題が残る。本総説では、遺伝子治療のこれまでの進歩と今後の課題を検討し、遺伝子治療と遺伝子編集戦略の差異を論じる。

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