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次世代の制御性T細胞療法

Nature Reviews Drug Discovery 18, 10 doi: 10.1038/s41573-019-0041-4

制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫細胞の中で、過剰な免疫活性化の抑制と免疫恒常性の維持を目的とするごく一部の細胞である。Treg細胞の発生不全や機能不全があると、制御不能な免疫応答と組織破壊が起こり、移植片対宿主病、移植片拒絶、自己免疫疾患などの炎症性疾患につながる場合がある。Treg細胞は、免疫応答を抑制するために12種以上の分子機構を展開するので、炎症性疾患の治療に用いる多面的で適応性の高いスマートな治療法となる可能性がある。実際に、Treg細胞療法の初期臨床試験によって、炎症性疾患における実現可能性、耐容性と潜在的有効性が明らかになった。一方、過去20年にわたるキメラ抗原受容体の開発とゲノム編集(CRISPR–Cas9の適用を含む)の進歩によって、がんの初代T細胞療法の遺伝的最適化が容易になった。これらの技術は、現在、Treg細胞の特異性と機能性を高めるために用いられている。本総説では、自己免疫と移植におけるTreg細胞を用いた治療法の設計と実施に関して、重要な進歩を説明し、今後を展望する。

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