Review Article

細菌感染症およびウイルス感染症のための宿主指向型療法

Nature Reviews Drug Discovery 17, 1 doi: 10.1038/nrd.2017.162

最近、抗ウイルス薬や抗生物質の開発が増えているが、抗微生物剤に対する薬剤耐性、および広域スペクトラムを持つウイルス標的薬がないことは今も重要な問題であり、感染症を治療するための新たな手法が緊急に必要である。宿主指向型療法(HDT)は、抗感染症分野に新たに登場した手法である。HDTの背後にある戦略は、病原体が増殖または持続生残のために必要とする宿主細胞因子への干渉、病原体に対する防御免疫応答の増強、増悪した炎症の低減、そして病変部位の免疫反応性の均衡を保つことである。一連のインターフェロンを用いるHDTが慢性ウイルス性肝炎の治療として確立されているが、持続性ウイルス感染症の実質的な完治を目的とした新規な戦略や、新興ウイルスに対する広域スペクトラムの抗ウイルス薬の開発が極めて重要と思われる。HDTの戦略は、結核のような慢性の細菌感染症の場合には、食細胞の抗微生物活性の増強と、可溶性因子(エイコサノイドやサイトカインなど)や細胞因子(補助刺激分子など)への干渉による炎症の低減を狙う。本総説では、敗血症を含めたウイルス感染症と細菌感染症のためのHDTの開発における最近の発展、さらにこうした新たな手法を臨床に適用する際の課題について述べる。

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