Analysis

薬剤の分子標的の包括的な地図

Nature Reviews Drug Discovery 16, 1 doi: 10.1038/nrd.2016.230

作用機序の解析に基づいた創薬の成否は、薬剤標的の定義に掛かっている。薬剤応答を遺伝的多様性と結び付けて考え、臨床的有効性と安全性を層別に理解し、同じ薬効分類の薬剤の差異を合理的に説明し、特定の患者集団における薬剤の有用性を予測することを目指した研究が進められているため、薬剤標的の定義の重要性はますます高まっている。ところが、文献に報告されている薬剤標的の定義は、すでに上市された薬剤と探索・開発段階にある治療薬候補のいずれについても不十分であることが多い。本論文では、承認薬の分子標的の包括的な地図の最新版を示す。我々は、生体分子を介して作用する米国食品医薬品局(FDA)の承認薬1578種に関して、ヒト生体分子と病原体由来の生体分子(合計893種)のキュレーションを実施した。この生体分子には、ヒト疾患の治療薬の標的となっている667種のヒトゲノム由来タンパク質が含まれている。こうした薬剤標的を解析したところ、疾患領域全体にわたって特権的な標的タンパク質ファミリーの優越が継続しているが、新規の画期的医薬品(ファースト・イン・クラス)の作用機序が、特にがん領域において増えていることが明らかになった。我々は、生物活性のクラスと臨床的成果の関係だけでなく、ヒトモデルと動物モデル、そして、病原体ゲノムとヒトゲノムの間にオルソログが存在するかどうかという点も調べた。そして、3つの独立した研究チームの共同研究により、分子治療の標的を正確に定義する研究における未解決の課題のいくつかを浮き彫りにし、分子薬理と薬効の複雑性を解明する際の現在の慣行を示す。

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