Review Article
KRASの小分子直接阻害薬:構造的洞察から作用機構に基づいた設計まで
Nature Reviews Drug Discovery 15, 11 doi: 10.1038/nrd.2016.139
KRASは、ヒトのがんにおいて最も高頻度で変異を起こしているがん遺伝子である。この特徴に加え、このタンパク質を標的とする試みが成功していないことから、RASは「新薬の開発につながらない(undruggable)」と見なされてきた。しかし近年、創薬の技術と新しい手法の進歩によって、直接的なKRAS阻害剤が近い将来に開発されるかもしれないという希望が新たに生まれている。本総説では、RASの構造、動態、変異による活性化と不活性化、およびシグナル伝達機構について詳細に分析する。この観点から、効率的なRAS阻害剤の作用のモデル機構を考える。さらに、直接的なRAS阻害剤に関する最近の報告を1つ1つ調べ、今後の開発への有望な道筋について論じる。