Perspective

がん幹細胞に取り組む — がん幹細胞はどんな挑戦を突きつけているのか?

Nature Reviews Drug Discovery 13, 7 doi: 10.1038/nrd4253

がん幹細胞(CSC)は、1994年に同定されて以来、集中的な研究の対象となっており、CSCの性質およびCSC形成の機構は現在のがん研究の主要な焦点となっている。その理由としては、CSCが腫瘍増殖を開始し推進する能力が増大していること、また、CSCが従来の治療に対して内因的な抵抗性を持っていることなどが挙げられる。上皮性がん細胞では上皮間葉転換(EMT)プログラムが活性化することで幹細胞のような性質を持つ細胞が生じることがあるという発見は、CSCが生じる仕組みを説明する機構の可能性の1つを提供しており、また、この発見はCSCの治療的な操作が有効な手段であることを示している。今回、我々は、EMTを起こすことのできる上皮性がん細胞を中心に、CSC研究の最近の進展に目を向ける。本稿では、こうした細胞を作り出すシグナル伝達経路、これらの細胞の分化の選択的な排除あるいは誘導に利用できる可能性のある細胞内因性メカニズム、そして、こうした細胞を維持している腫瘍の微小環境の役割について述べる。最後に、我々は、CSCを取り除く新しい治療法を設計するための、CSCの複雑な生物学に関する現在の知識の使い方を提案する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度