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レーザーによる雷の誘導

Nature Photonics 17, 3 doi: 10.1038/s41566-022-01139-z

帯電した雲と地表面の間の雷放電は、大きな損害や死傷者を出す原因になっている。従って、従来のフランクリンロッド(避雷針)に加えて、より優れた防護方法の開発が重要である。今回我々は、短い高強度レーザーパルスによって空に形成されたレーザー誘起フィラメントが、かなりの距離にわたって雷放電を誘導できることを初めて実証したことを報告する。我々は、この実験的ブレークスルーが、雷防護や雷物理学の進歩につながると考えている。2021年の夏にスイス北東部のゼンティス山で、高繰り返し率のテラワットレーザーを用いて実験キャンペーンが行われた。50 mの距離にわたる上向き負極性雷リーダーの誘導が、2台の異なる高速度カメラによって記録された。レーザーフィラメントによる負極性雷リーダーの誘導は、他の3例において超高周波干渉測定によって裏付けられ、誘雷事象時に検出されるX線バーストの数が大幅に増加していた。この分野では20年以上にわたって大変活発に研究が行われているが、レーザーによる誘雷を実証する野外実験の結果が得られたのは今回が初めてである。今回の研究は、超短レーザーの新しい大気応用への道を開くとともに、空港、発射台、大規模インフラ向けのレーザーベースの雷防護の開発における重要な一歩前進となる。

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