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電子速度のしきい値をなくした集積型チェレンコフ放射源

Nature Photonics 11, 5 doi: 10.1038/nphoton.2017.45

チェレンコフ放射は、反陽子、J粒子などの素粒子やニュートリノ振動などの物理現象の発見に重要な役割を果たしてきた。自然媒質中でのチェレンコフ放射発生に必要な電子エネルギー(速度)のしきい値は、数百keVよりも大きい。さまざまな手法が採用されてきたが、実験的にチェレンコフ放射を生成するには、依然として高エネルギー電子(数十keV)が必要である。今回我々は、ハイパボリック・メタマテリアルで、チェレンコフ放射の電子速度しきい値を排除できることを実証している。しきい値のないこのチェレンコフ放射を利用して、集積型自由電子光源が初めて実現された。λ0 ≈ 500~900 nmをカバーするチェレンコフ放射が、わずか約0.25~1.4 keVの電子エネルギーで得られている。この値は、これまでの報告と比較して2~3桁低い。今回の研究によって、しきい値のないチェレンコフ放射を実現する方法が得られ、高い性能を示す集積型の自由電子光源やオプトエレクトロニクスデバイスを探索する可能性が開かれるとともに、チップ上で飛行電子とナノ構造体の相互作用を調べるプラットフォームが得られる。

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