Research Highlights

エネルギーハーベスティング:自作できる熱電デバイス

Nature Nanotechnology 2019, 319 doi: 10.1038/s41565-019-0411-4

ウエアラブルな固体熱電デバイスによって廃熱を電力に変換できれば、魅力的で費用のかからない環境に優しい発電方法になる。有機熱電デバイスの性能は、無機熱電デバイスに大きく後れを取っているが、炭素系材料は豊富にあって毒性がなく、溶液から低温で作製できるため、製造工程が簡素化されるとともに有機熱電デバイスの価格は安くなる。今回Abo-Fotouhたちは、微細分散したカーボンナノチューブに埋められた細菌を培養してセルロースフィルムを生成し、生分解性の熱電ペーパーを作ったことを説明している。

著者たちは、水溶液中でフィルムを育てている。同時にこの水溶液は、細菌の増殖を促し、コロイド的に安定したナノチューブを分散させる働きをする。数日後、センチメートル大の自立する柔軟なフィルムが完全に形成された。予想通り、このフィルムは、熱伝導率が低く(1 W m−1 K −1)、カーボンナノチューブの含有量がわずか10重量%と多くないにもかかわらず、その熱電性能はバッキーペーパーに匹敵した。Abo-Fotouhたちが開発したこの複合物は、p型であるが、例えばポリエチレンイミンを、ドープすると容易にn型に変換できる。さらにこのセルロースは、熱や酵素を用いて分解し、ナノチューブを集めてリサイクルできる。

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