Research Highlights

人工細胞小器官:細胞の合図を感知する

Nature Nanotechnology 2018, 518 doi: 10.1038/s41565-018-0153-8

ポリマーソームはポリマーの小胞で、生細胞内で特定の反応を行うように設計され、天然の細胞小器官を簡易化した機能を果たす。生物の細胞小器官と同様に、ポリマーソームは選択的な透過性があり特定の細胞シグナルに応答するのが望ましい。1つ目の要求は、膜タンパク質、チャネルタンパク質ポーリン、細孔形成ペプチドを膜に封入することで満たされるが、細胞刺激の感知を通したポリマーソームの活性の調節は難しい。

今回、Einfaltたちは、グルタチオン(GSH)の細胞内濃度に応答するポリマーソームを合成している。応答要素は、チャネル開口部に空間的に近いシステイン残基を2つ含む、遺伝子操作されたチャネルタンパク質ポーリンである。このポーリンは、いったん膜に挿入されると、キャッピング分子を持つレドックス感受性の複合体を形成して、ポリマーソームへの出入りを調節する。酸化条件では、このキャップがポーリンのシステインとジスルフィド結合を形成して、膜チャネルへの入り口をふさぐが、還元条件では、チャネルは開いたままになる。著者たちは、西洋わさびペルオキシダーゼをこの小胞内に封入し、GSHのみの存在下で酵素活性を測定して、in vitro機能を実証している。

さらに著者たちは、ヒーラ細胞とゼブラフィッシュ胚のマクロファージの中で、今回の小胞がレドックス感受性の活性を維持し、急性毒性の徴候がないことも実証している。後者の結果は、こうした人工細胞小器官を医学的応用にin vivoで利用できる可能性を裏付けている。

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