Research Highlights

抗菌剤:バイオフィルムに穴を開ける

Nature Nanotechnology 2018, 1218 doi: 10.1038/s41565-018-0334-5

細菌コロニーの周囲に形成されるバイオフィルムは、細菌の細胞層内の抗生物質の拡散や浸透を妨げるため、抗菌効率が低下し耐性が増す。バイオフィルムの完全性を阻害する薬物学的治療法はあるが、特定の細菌種が対象である。バイオフィルムの物理的破壊は、一般的に適用できる代替法になる可能性がある。

今回Teirlinckたちは、細菌性バイオフィルムを培養して金ナノ粒子を加えレーザーを照射すると、レーザー照射によってナノ粒子に生じた熱によってバイオフィルム内の水が蒸発して水蒸気のナノバブルが作られることを示している。このナノバブルが、バイオフィルムの完全性を局所的に壊し、細菌集団の細胞間の間隔を広げて、小分子の浸透性を高める。この処理を行った結果、3種のグラム陽性菌とグラム陰性菌の抗生物質トブラマイシンに対する感受性が高まった。この方法は、レーザー照射の局所的効果を用いることによって副作用を低減しており、また、毒性が低く、周囲の環境への熱伝達がごくわずかなため、浅い傷や表在感染のケアに役立つ見込みがある。

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