Research Highlights

ナノ光学:数オングストロームを計る光子の定規

Nature Nanotechnology 2018, 1218 doi: 10.1038/s41565-018-0333-6

誘導放出抑制顕微鏡法などの、回折限界を回避する光学的方法はあるが、可視光によるオングストローム精度での位置測定が不可能であることは、共通の認識である。それにもかかわらずBagたちは今回、精密に調整したレーザー光と球状のシリコンナノ粒子を用いて、ナノアンテナの変位をサブオングロストロームの精度で測定できた。

著者たちの研究は、Kerker散乱と呼ばれる効果に基づいている。誘電体粒子の電気双極子と磁気双極子を同時に励起する入射波は、非対称的に散乱され、横方向散乱が弱くなったり強くなったりする。以前に同じグループが、ナノ粒子に集束したラジアル偏光の利用を提案した。その場合、光の伝搬方向に対して横方向の散乱の干渉によって、散乱体の位置に関する情報を含む強度分布が遠距離場に生じる。今回Bagたちは、粒子だけでなくその担体との界面も考慮に入れる分析モデルを考案した。彼らのモデルは、粒子のサイズや形、光の波長などのさまざまなパラメーターの影響をシミュレートして、最高精度で位置を決定できる。次に著者たちは、最適化した波長と十分に集束したレーザーを用いて、サブオングストロームの精度で単一のナノアンテナの変位を数オングストローム追跡することができた。

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