Research Highlights

ナノ結晶:意外な磁性

Nature Nanotechnology 2015, 615 doi: 10.1038/nnano.2015.125

磁石になる物質は、その内部に磁性原子を持つと考えられているだろう。しかし、ナノ構造体では、名目上は非磁性の原子からも磁性が生じ得る。例えば、ヨッフェ物理工学研究所のA Rodinaと米国海軍研究所のA Efrosは今回、CdSeナノ結晶では、その表面の原子のスピンに起因して大きな磁化が生じ得ることを示唆している。

このナノ結晶の光学特性は完全には分かっておらず、熱によって活性化される発光の観測はまだ完全には説明されていない。標準的な光学実験では、光によって電子正孔対つまり励起子が励起され、この励起子は2つのカテゴリーに分類される。その1つの発光性励起子では、電子と正孔は反対のスピンを持ち、再結合して光を放出できるもう1つの非発光性励起子では、電子と正孔のスピンの方向が同じで、電子か正孔のどちらかのスピンが反転しなければ、再結合して光を放出できない。

RodinaとEfrosは、発光の温度依存性を決めるのは、非発光性励起子とナノ結晶表面のダングリングボンドのスピンの相互作用であると述べている。彼らの理論では、観測される臨界値より高い温度では、ダングリングボンドのスピンは高い熱エネルギーを持ち、ランダムな方向を向くことが示される。そのために、非発光性励起子との相互作用によってスピン反転事象が起こり、非発光性励起子が発光に寄与できるようになる。しかし、臨界温度以下では、ダングリングボンドのスピンは同じ方向に沿って整列している。その結果、スピン反転事象はずっとまれにしか起こらず、発光に対する非発光性励起子の寄与は失われる。さらに、全スピンが整列しているため、コロイド状ドット全体に広がる集団的磁性状態である磁気ポーラロンが生成される。

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