Research Highlights

二次元電子ガス:バンド構造を掘り起こす

Nature Nanotechnology 2013, 513 doi: 10.1038/nnano.2013.88

二次元電子ガス(2DEG)は、垂直方向に空間的に閉じ込められた電子の集団である。シリコンでは、電子ドナーとなるリン不純物を垂直方向にシャープなプロファイルでドープすると、このドーピングの結果として2DEGが形成される。2DEGは表面下数ナノメートルにあることが多く、電荷担体が表面の影響から遮蔽されるため、2DEGの電子的性質を直接調べることは困難である。ノルウェー科学技術大学、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)、オルフス大学(デンマーク)のJ Wellsたちは今回、角度分解光電子分光法(ARPES)を用いて、埋め込まれた2DEGのバンド構造を直接測定した。

Wellsたちは、表面下2 nmにリンドーパントが埋め込まれたシリコン試料のバンド構造を測定し、測定結果をリン不純物のないシリコン試料と比較した。ドープした試料をARPESで測定した結果から、フェルミエネルギーに近いシャープな状態が明らかになり、二次元的であることが確認された。さらに、バンド構造全体がシフトしていることもわかった。 ARPESのプロービング深さは実際には1 nm以下であるが、光電子放出が共鳴増強されるため、2DEG状態を観測できた。

Wellsたちは、この方法はシリコンに埋め込まれたリンドーパントの研究に限定されるものではなく、この方法を用いて電子の有効質量などのパラメーターも得られる可能性があることも示唆している。

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