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ヒトのミトコンドリアDNAの鎖選択的な塩基編集を行うmitoBE

Nature Biotechnology 42, 3 doi: 10.1038/s41587-023-01791-y

ヒトのミトコンドリア病には塩基エディターで修正可能な点変異が原因となっているものが複数存在するが、CRISPRガイドRNAをミトコンドリア内に送達することは困難である。本研究では、TALE(転写活性化因子様エフェクター)に融合させたニッカーゼをデアミナーゼと組み合わせることによってミトコンドリアDNAの正確な塩基編集を行う、ミトコンドリアDNA塩基エディター(mitoBE)を紹介する。ニッカーゼMutHまたはNt.BspD6I(C)を融合させたミトコンドリア局在性のプログラム可能なTALE結合タンパク質を、一本鎖DNA特異的アデニンデアミナーゼTadA8e、またはシトシンデアミナーゼABOBEC1とUGIのいずれかと組み合わせることにより、AからGまたはCからTへの塩基編集が、最高77%の効率と高い特異性で実現した。mitoBEはDNA鎖選択的なミトコンドリア塩基エディターであり、編集結果はニックのないDNA鎖に保持される可能性が高いことが明らかになった。さらに、環状RNAにコードされたmitoBEを送達することによって、患者由来細胞の病原性ミトコンドリアDNA変異が修正された。mitoBEは、遺伝性ミトコンドリア病の治療に幅広く応用可能な正確で効率的なDNA編集ツールをもたらす。

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