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低免疫のiPS細胞は十分な免疫能のある同種異系アカゲザルで長期間生存する

Nature Biotechnology 42, 3 doi: 10.1038/s41587-023-01784-x

レシピエントの免疫系による拒絶反応を完全に防ぐ同種細胞治療薬の遺伝子工学的作製は、免疫抑制剤や封入の必要性を廃し、汎用的な細胞製品の大規模な製造の支えになると考えられる。我々は以前に、HLAクラスI分子とクラスII分子を除去してCD47を過剰発現させることにより(B2M−/−CIITA−/−CD47+)、マウスとヒトの低免疫多能性(hypoimmune pluripotent:HIP)幹細胞を作製した。我々は、この方法が非ヒト霊長類で実施可能かどうかを明らかにするため、アカゲザルのHIP細胞を作製し、それを4頭の同種異系アカゲザルに筋肉注射で移植した。このHIP細胞は、十分な免疫能のある同種異系アカゲザルで16週にわたって制限なく生存し、複数の系譜に分化したが、同種異系の野生型細胞は激しく拒絶された。また、ヒトのHIP細胞を分化させて内分泌学的活性を示す膵島細胞を得ると、それらは免疫能のある同種異系糖尿病ヒト化マウスで4週にわたって生存し、糖尿病を改善させることが示された。HIP編集を行った初代アカゲザル膵島は、免疫抑制剤を用いずとも同種異系アカゲザルレシピエントで40週にわたって生存したが、未編集の膵島は迅速に拒絶された。

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