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SARS-CoV-2とヒトのコンタクトームの全プロテオーム的マップ

Nature Biotechnology 41, 1 doi: 10.1038/s41587-022-01475-z

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度の構造を解明して新たなウイルス変異株の治療法を効率的にデザインすることは、現下のパンデミックでいまだに切迫した課題となっている。感染および免疫反応は、ウイルス分子と宿主プロテオームとの直接的な接触によって生じるが、そうしたウイルスと宿主との接触(「コンタクトーム」)の大半は明らかにされていない。本論文では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のヒト宿主との体系的なコンタクトームマップ(ウイルス・宿主間およびウイルス内の2成分タンパク質間相互作用を200組以上含む)を紹介する。我々は、重症COVIDの共存症および長期持続症状と遺伝的に関連する宿主タンパク質がSARS-CoV-2の標的ネットワークコミュニティーに多くなっていることを見いだした。コンタクトームから導かれた仮説を評価することにより、サイトカインのシグナル伝達が存在する場合でも、ウイルスのNSP14が核因子κB(NF-κB)依存性の転写を活性化させることを実証した。さらに、試験したいくつかの宿主タンパク質では、遺伝子ノックダウンによってウイルスの複製が大幅に抑制された。加えて、USP25に関しては、この作用の表現型が低分子阻害物質AZ1によって再現されることも示された。今回の結果は、ウイルスタンパク質をCOVID-19の重症度に関するヒトの遺伝子構成と結び付けるとともに、潜在的な治療標的をもたらした。

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