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がんの対立遺伝子特異的コピー数変化とクロマチン接近可能性の統合的単一細胞解析

Nature Biotechnology 39, 10 doi: 10.1038/s41587-021-00911-w

がんのプログレッションは体細胞のコピー数異常(CNA)とクロマチンリモデリングの両方によって促進されるが、がんのクローン多様性の形成におけるこれら2種類の事象の相互作用についてはほとんど知られていない。本論文では、単一細胞DNA塩基配列解読(scDNA-seq)やトランスポザーゼが接近可能なクロマチンの塩基配列解読(ATAC-seq)のデータへの応用が可能な対立遺伝子特異的コピー数推定法であり、対立遺伝子特異的コピー数とクロマチン接近可能性の複合的解析を可能とするAlleloscopeを紹介する。胃がん、大腸がん、および乳がんの検体のscDNA-seqデータでは、Alleloscopeと共に、対応するリンクリード塩基配列解読を用いて検証を行ったところ、極めて複雑な多対立遺伝子型CNAが広く生じていることが明らかになり、腫瘍内には同一の総コピー数を増すさまざまな対立遺伝子構造の細胞が共進化していた。2点の基底細胞がん検体と1系統の胃がん細胞株のscATAC-seqでは、Alleloscopeによって多対立遺伝子型コピー数事象とコピー数に変化のないヘテロ接合性の喪失が検知され、腫瘍の進化に対する染色体不安定性とクロマチンリモデリングの寄与を分析することが可能となった。

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