Letter

腫瘍標的抗体を用いたウイルス性エピトープの送達によるCMV特異的T細胞を利用したがん治療

Nature Biotechnology 38, 4 doi: 10.1038/s41587-019-0404-8

免疫チェックポイント遮断や養子T細胞療法といったがんの免疫療法は腫瘍に対するT細胞の活性を高めるが、そうした方法は実際の腫瘍抗原に特異的なT細胞が存在しなければ効果を発揮しない。本論文では、非がん性抗原を腫瘍に植え付けることによってこの抗原に特異的な内因性T細胞に腫瘍を攻撃させる免疫療法について概説する。この方法では抗体・ペプチドエピトープ複合体(antibody–peptide epitope conjugate;APEC)を用い、HLA-Iによって提示するのに適切な抗原を腫瘍表面に送達する。我々は、サイトメガロウイルス(CMV)特異的CD8+ T細胞を抗腫瘍T細胞に転用するため、腫瘍標的抗体と結合したCMV由来エピトープを含むAPECを用いた。この標的抗原は、腫瘍に特異的に発現するメタロプロテアーゼに感受性のリンカーを用いることにより、腫瘍内でのみリリースされる。これらのAPECは、in vitroおよびマウスがんモデルで既存のCMV免疫を腫瘍細胞へ振り替えることに成功した。in vitroで、APECはCMV反応性エフェクターT細胞を特異的に活性化させたのに対し、二重特異性T細胞誘導抗体はエフェクターT細胞と制御性T細胞の両方を活性化させた。今回発表した免疫療法は、チェックポイント阻害剤などの免疫療法に抵抗性を持つがんに対する効果的な代替法となる可能性がある。

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